My Darling, Darling Please!!
河合開


−−どもっス。本日は、えー、お二人の赤裸々なお話を聞かせて頂くということで。
「あのね…こいつが何かモノに釣られたんだか賭けに負けたんだか知らないけど、
一般的な雑談以上に出てくる話はないわよ」
「まあまあ、ひよりんは同性愛にも理解があるし、造詣も深いから、悪いようには
しないと思うよ?」
−−ええ、まあ。ネタに使うとかあってもお二人の名前は出しませんし、
 ホラ、ゆうちゃんとみなみちゃんから相談受けたりした時のために、ってのも
 あるわけで…ご協力いただけたらと。
「って、ゆたかちゃんもそうなの!?」
「やー、ひよりんが勝手に勘繰ってるだけだけど、私も最近ちょっと怪しいと
思ってるんだよね〜」
「あんたらの思考回路での『怪しい』がどれだけ信用ならんかは私が一番知って
いるんだが」
「いやいや、高校の頃ってさ、『仲いいなあ』って感じだったけど、最近は何ていうのかな、
ちょっと友達以上になっちゃってない?って感じるんだよー」
−−必要以上に仲良し。
「まあ、そこは話半分に受け止めておくわ…だからって別に私たちのこと話す理由にも
ならないでしょ」
−−えーと、いや実際メモとか取ってますけど、オフレコな事とかは言って
 いただければちゃんと伏せますので…。
「オフレコって言葉自体がもう信用ならないのよねー…あんたはどうなのよ、
こういう、何というか、プライベートな事を他人にペラペラ喋って平気なの?」
「そりゃ、話す相手は選ぶけど。オタクって外からも中からも差別し合うような
部分があってさあ」
−−まあ…そっスね、知り合いに話すなら一般人の方が、まだ同情的な感じに
 なるかもです。
「それはそれでムカつくんだけど…。こっちは好きでやってるんだーって」
「オタクは逆にその『好きでやってる』が気に入らないんじゃないかな」
−−排他的な集団なのに、自分が排除されると荒らすんですよねー
「まったく、やだやだ」
「いや…私から見たらあんたらも変わらないんだけど」
−−他の人から見たら、かがみさんももうこっち側なんじゃないですか
「えぇ?それはないでしょー?…ないよね?」
「行動範囲がねぇ。私と大分似通ってきてるから」
「そ、それはあんたに合わせてるだけなんじゃない!私は別に…」
「ツンデレキター」
−−キター
「…あー…もういいわ。抵抗する方が疲れるってのはこいつから学んだから。
で、何が聞きたいの?」
「おお、諦めた」
−−えーと、まあ日常的なところから。お二人は同居…同棲?なさってますが、
 大学は別ですよね、そのへんの経緯から。
「こいつから聞いてないの?そのへんは別に隠すことでもないけど…」
「お互い『同棲』とか『兄妹』みたいなフックがある部分以外、
プライベートのことはあんま話さないねえ」
−−そうですね、お二人が卒業なさってから疎遠になってしまいましたし。
「まあ、だらだら話してたら終わらなそうだから先に説明するけど、私は
もともと妹…つかさ、知ってたわよね?つかさと二人で住む予定だったのよ。
二人とも東京の大学受かったし、少し親元を離れてみたらどうかって」
「そこに私も乗っかったわけだよ」
「最初2DKで探してたのに、こいつがどーしても8畳以上の部屋と荷物置き場が
必要って言うから、3LDKになっちゃってねえ」
「その分、私が家賃半分出してたし」
「今は二人だから、3分の2出して欲しいわ」
「荷物増えちゃったし、引っ越すのもめんどいよねー」
「ちゃんと整理すれば2DKでも十分だと思うんだけどね」
−−えーと、すみません。経緯ですが、最初は3人で暮らしてたわけですよね?
「そうそう、私とつかさとこいつで。最初の3ヶ月くらい…だっけ」
「いや、もっと短かったんじゃ?つかさがあんまり帰ってこなくなってさ」
「荷物まとめて、ってのがそのくらいかぁ。じゃ、ホントに3人での生活は
短かったのね」
「つかさがご飯作ったりお風呂掃除したりとか、ほとんどしてなかったよねー」
「まあ、あっさり食事はあんた、掃除は私、ってなっちゃったわよね」
−−あの、すみません、つかささんと喧嘩した、ということで?
「いやいや、つかさに彼氏できちゃってさ、半同棲って感じで彼氏のとこ
入り浸るようになっちゃったんだよ」
「まあ…私はそれで喧嘩したような感じだったんだけど」
−−で、結局出ていったと。つかささんの彼氏は大学の人ですか?
「そそ。凄かったのよー最初」
「入学当初、怒涛の8連コンボとか言ってるけどね、入学1週間で8人から
告白されちゃったとかでねー」
−−8人っスか?凄い、モテモテじゃないスか!
「なんか男ばっかりのサークルに入っちゃったみたいで、8人中5人はその
サークルの人だとか」
「ま、結局付き合うことにした人もそのサークルの人なんだけどね。モテそう
なのにそーゆー話聞かないなとか思ってたら、ウチの高校の男子、やっぱ
ヘタレだらけだったみたいだね」
「ウチの高校、ってーかウチの学年、なのかしら。大学入ったら周りで
そーゆー話だらけになってびっくりしたわよ」
−−あー、部活でクラスとか学年とか飛び越えた雰囲気みたいなのは伝播します
 よね。私のとこもあんまりクラスにカップルいなかったですけど、下の学年から
 徐々にカップル増えてきたみたいですよ
「そうなの?イヤな世代に生まれついたのねー」
「かがみんはそんなに彼氏欲しいんだったら自分から動けばいいのに、って
昔から思ってたんだけどね」
「でも…なんか、やっぱり女の子から動くのって、恥ずかしいというか」
「男の子だって恥ずかしいんだよ。積極的な女の子の方が結局は彼氏とか
いた印象だし」
−−ちなみにお二人は、大学入ってから彼氏とかは?
「あー…いやぁ、そういうの、なかったわけじゃないけど、ねえ?」
「私は試しに付き合って3日で別れた」
「どこのロリコンだって話よねー」
「ひどいなあ…それを言ったらかがみんだってロリコンってことじゃんかぁ」
「う…それは考えてもみなかった…」
−−かがみさんのお話は?
「ん、先輩から付き合ってくれって言われたんだけど、あまり好きなタイプじゃ
なくて…っていうか、どっちかというと嫌いだったんだけど、でも、折角
告白されたわけだから付き合っちゃおうかとも思ったんだけど」
「私が阻止したのだよ」
−−妨害工作っすか!
「いや、ていうかね、かがみがなんか、すごい憂鬱そうに『まあ、仕方ないから
付き合っちゃおうかな』みたいな事言っててさあ、いやあ、それはさすがに
断るべきでしょ?って」
「その時付き合ってたら、案外上手く言ってたのかも、とか未だに思っちゃうけど、
実際はそんなことないんだろうね。こいつみたいに」
−−3日でお別れって…どんな感じで?
「いやね。ネトゲのオフ会とか行ってみたのよ」
−−ネトゲ繋がりっすか!イタそうな予感が…。
「いや、そんなことなくて。濃い人多い中、ゲーム内ではすごいはじけるタイプの
人が、会ってみたらホント普通の人で」
−−同人とかでも、普通にイケメンな人、割合は低めですけど、いますよね
「んー、イケメンってほどでもないかな。私、顔はほんとどーでもいいみたい」
「なーんか遠まわしに私の悪口になってる気がするんだが」
「かがみんはイケメンじゃん」
「それはほめてない」
−−まあ、普通の人だったと。普通だったからダメということですか?
「いやあ、何というかね、メールとか電話とか、面倒でさ。うぜー!めんどくせー!って
切れて電源切って放置してたらウチまで来るしさあ、それでネトゲも鯖変えたんだよ」
「付き合うのに同意しといて、ひどいわよね」
−−うーん、お互い温度差があると続かないですよね。メールの頻度とか。
「実際のところ二次元方面のオタクって、人間の見た目って全然気にしない人
多いんだよ。要は、そこらへんのフィーリングが合えばまあいいかなって思ってたんだけど」
−−うーん、二次元キャラの見た目にはこだわるから、生身の人間については
 見た目はどうでも良い、って意味でしょうか?
「そうそう。人間の見た目にこだわるのってアイドルオタクとか、そっち系
だよね。どうでも良いって言うとイメージ良くないかな?こだわらないって
感じ」
「テレビとか良く見る人の方が、身近な人に対して芸能人くらい綺麗になれ、って
強要してるような感じ?んー、それも短絡的だとは思うけど」
「オタクって括っちゃって人を卑下するような人とか多いからね。実際アイドル
オタクってあんま知り合いにいないから、私も想像で『キモオタ』って
括っちゃってるかも」
−−えーと、お二人の話に戻りましょうか。つかささんに彼氏が出来て、出て
 いっちゃったんですね?
「そうそう。その後つかさの部屋を客間にして、そのままずっと」
−−お家賃とか大丈夫だったんですか?
「つかさは親にはまだ私たちと住んでることにしたてから。今の彼氏は親公認
だからもう彼氏のお隣に堂々と引っ越したんだけど、あの頃は随分バイトしてた
みたいね」
「あそこのデニーズはいつ行ってもつかさが居るんだよ。なんか、ウチの大学でも
ファンクラブとか出来てたみたい」
「マジで?」
「今の彼氏もバイト仲間でしょ?密かに愛を育んでいたんだろうねえ」
「なーんかドロドロしてそうで詳しい話聞くの怖いのよねえ」
−−えーと、面白そうなので、今度つかささんにも取材させてください
「やー、無理でしょ」
「つかさも切り替え早くするのを覚えたよね、前はもー、彼氏と喧嘩する度に
大変だったよ」
「ある意味ドライになったというか…もう『どうなのよ?』って言っても
『うん、普通』って返ってくるだけで少し寂しいわ」
−−あっと。また全然話を戻してなかったですね
「あ、ホントね。っていうか、まあ、居ない人のウワサって盛り上がっちゃう
もんだから」
「欠席裁判はこうして生まれるのであった」
−−柊つかさは有罪ということで
「待った!」
「ちょ」
「あなたの証言はムジュンしている!くらえ!」
−−ぱぱぱぱぱぱらぱぱー
「はいはい、話を戻すわよ」
「なんだかんだ言ってインタビューにノリノリなかがみんであった」
「うるさい」
−−失礼しました。えーと、ではつかささんが居なくなった後のお二人について。
「別に、普通よね」
「たまにつかさが泣きながらやってくる以外はね」
−−いつごろ、その、付き合うとか意識されました?
「んー」
「えーと、結構恥ずかしい話になっちゃうんだよね」
−−じゃあ、時期だけでも
「二人になってから半年ちょっと?その年の冬よね」
「そうそう私が風邪引いてーの、かがみんが看病してくれーの、ってとこから」
−−なんか、恋人というより、家族という感じのアプローチだったんですね。
「幼馴染とか、妹とか、そっち系かもねー」
「いや…どうだろ?」
−−お知り合いで、他に…その、同性愛の方とかいらっしゃいます?
「いないわねぇ」
「ネットの中の人ならたくさん」
−−いやあ、あの手のは二次元と同じようなもんですから
「百合も最近結構市民権を得てきたと思うんだよ」
「いや、そっちの方面で認められても嬉しくないから」
「まあ、マジレスすると、女子高出身の娘に聞いたら、やっぱり何人かは
そーゆーのあるみたいだよ。でも、やっぱ卒業したら終わっちゃうみたい」
−−あー、確かにそっち系はもう女子高生オンリーってイメージですよね
「アメリカとかだとそれなりの年齢でもレズビアンな人っているみたいだけど」
「レズビアンって聞くとやっぱり日本ではイメージ良くないかもね」
−−百合だと若い娘の純愛、レズビアンだと大人の性的なものを含むって
 イメージですよね
「じゃあ私達はレズビアンで合ってんじゃん」
「ちょっ…」
−−いや、えーと、ははは、今のは、つまり…ですね
「そりゃあ…まあ、男女とか考えなければ二十歳過ぎて付き合ってる恋人同士
だったら、って感じで…」
「ズコバコだね」
「こらぁあーっ!」
−−いや、その、大丈夫ですよ?私だって普通に二十歳超えてますし。
 じゃあ、もうここまできたら色々ぶっちゃけちゃいましょう。週何回くらい?
「ちょっと、ぶっちゃけすぎ!」
「まあ、いいんじゃないかな。普段こういう話する機会ってほとんどないじゃん?
悩みとか抱えちゃうと2ちゃんとかで欲求不満の解消計ったりするようになるし」
「それはあんただけだ」
「かがみんの場合お菓子の量が増える」
「うっ…」
−−はは…で、どうでしょ?
「…し、週に…4〜5回?」
「しない日もある、って感じかな。週末は実家帰ったりするし」
−−ほぼ毎晩ですか?飽きたりとかは特に?
「いやあ、朝食前にもう一回、とか学校サボって、とかはさすがに最近は
なくなっちゃったよね」
「ま、まあ、お風呂上がってから、寝る前に軽く運動、ってノリかしら」
−−どちらから誘うとか、そういうのあります?
「うーん、基本毎晩だし、どっちかが寝ちゃってたらまあいいか、みたいな」
「たまにこいつゲームしててね、『先寝るわよ』って言ったら『あー、今日は
したかったのに、でもちょっと今キリが悪いから』とかって何時間か
待たされたりするけどね」
「むぅ…かがみんだって、私が先に寝てたらちょっかい出して来たりする
じゃんかあ」
−−ははは…それ以外の日はもうお互いするものとして考えてるから、って
 感じですね。
「まあ、一緒に寝てるし」
「恋人ってより、夫婦みたいな感じなのかな」
−−と、すると倦怠期とか
「学生のうちは特に感じないけど、仕事するようになったらあるのかもね」
「『私が帰って来たのにメシが出来てないとは何事だ!』『何よ、私だって
働いてるんですからね!あなただって、掃除当番とか全然やってくれない
じゃない!』って?」
「それは夫婦喧嘩で、倦怠期とは違うんじゃ…」
−−いやまあ、倦怠期ってお互い『喧嘩するのもバカらしい』って感じ
 らしいですからね。喧嘩してるうちは結構大丈夫かも。
「うちは喧嘩も早く仲直りも早いから」
「あとは役割分担とか特に押し付けてないし。食事と掃除ってのも強制じゃ
ないからね」
「電気代と電話代はうるさいけどね」
「あんたはエアコンとパソコンと、電気使いすぎなのよ」
−−なんか、お二人らしいというか…あまり高校のときから関係が
 変わってないようにも見えますよね、当時はそういうの意識したりとかは?
「わ、私は別に…いや、まあ、少しは、あったのかな…?」
「私はそんなかがみんを見てキモいと思ってた」
「何だとこのやろう」
−−ははは、高校生とか、そんなもんスよ。深刻な問題に直面しちゃうと
 面倒でバッサリ切り捨てちゃうとか。そんな感じで、何か、周囲から
 迫害されたりとかってあります?
「うーん、私は基本的に他人に話さないから…家賃高いから友達と一緒に
住んでる、って言って学校の人も呼ばないし」
「私は恋人と同棲してるって言いふらしてるけど、別にかな」
「そう、聞いてよコイツ、お父さんにまで『私女の子の方が好きだから
かがみと付き合う事にしたから』って言ってんのよ?」
−−うわぁ…お父さんの反応はどうでした?
「やー、最初は絶句してたけど、なんか次の日には吹っ切れた様子で
『悪い虫がつくよりはずっといい』って。まあ、そういう感じになるだろうなって
予想してたし。」
−−かがみさんはご家族には話してないんですか?
「つかさは知ってるけど…なんかポロッと喋っちゃいそうで怖いのよね」
「少しずつカミングアウトするのも手なんじゃない?」
「いやよ…お姉ちゃんも結婚して、後継ぎが出来たとか喜んでたら神社を
継ぐの継がないのってまた揉めてるんだし…」
−−家の事は揉めると怖いですよね…センパイはそういうの特にないですか?
「んー、お父さんが死んだらとかそうなると色々あるかもだけど、今のところは。
さすがに親戚に『ウチの娘は同性愛者』とか触れまわったりしてるわけじゃ
ないし」
−−いや、さすがにそれは。あれ、ゆうちゃんは?
「ゆうちゃんは薄々気付いてはいるのかな?ゆい姉さんとかはそういうの
気にしなさそうだけど、既婚者だし一応伏せてる感じ」
「でもさー、『私レズなんですよー』とか冗談めかして言って、『うわ、キモっ』
とか反応されたら傷つかない?」
「まあ、そういう人とは付き合わないようにするかな」
「悪い人ではないんだけど、そういう事言いそうな人って結構居るのよね…」
「かがみんってさ、人間関係『来るものは拒まず』ってとこがあるんだよ」
「え…そう?そんな事ないと思うけど…」
「最初に少しキツい態度見せて、それで引かずに向かい合ってきたらもう
合格って友達になっちゃうみたいな」
「あー…なんか心当たりあるかも」
−−ツンデレの基本っすね!
「萌えるでしょ」
「あんたら…」
−−かがみさんのお姉さんとかもあまり味方にはならなさそう?
「うーん、多分無理ね…別に仲悪いわけじゃないけど、そういう話とかは
全然しなかったし」
−−最近は外国では同性結婚も認められてるところもあるって聞きますけど、
 結婚とかは?
「というか、まだ学生だし」
「まあ、親戚から祝福されるとも思えないし、将来的にもやっぱり厳しいかなあ」
−−でも、したいとは思う?
「そりゃ…まあ」
「コスプレで良ければ今度のコミケで」
「絶対やらない」
−−例えば、就職して会社に入って、そこでカッコいい男性に結婚を前提に
 付き合ってくれとかそんな感じになったら?
「いや…そりゃ『もう付き合ってる人がいるから』って断るわよ」
「そもそもそういう状況がイマイチ想像できないね」
−−例えば、例えばですよ?お気を悪くなさるかもしれませんけど…、もし
 お二人が別れる事になったら、次も女性と付き合いますか?
「イヤな質問ねえ…」
「まあ、付き合ってる人に別れたらどーするって聞いても『謝ってもっぺん
同じ人と付き合う』って答えしか返ってこないでしょ」
−−それもそうですね、すみません。えーと…お二人は付き合う前と後で何か
 変わったと思います?
「考え方とかはそりゃ少しは変わったと思うけど…生活スタイルとか、
そういうのは全然変わってないわね」
「夜寝る前の運動が加わっただけというか」
「…あんたってば」
−−えーと…ちなみにどちらがタチで?
「攻めって言わないとこに成長を感じるね」
−−いや、そのくらい知ってますよ!厨房扱いすんな!
「腐女子はなんかブームになってからウザくなってきたよね」
−−それは男性オタクとかも同じですから
「ちなみにご想像の通りかがみんがタチかな。体位は私が上になることも
多いけど」
「ちょっと!上手く話を逸らしてるなあとか思ったのに!」
−−はは…どちらかというと、そういうお話を聞きたいんですけどね
「さすがに他人に喋るようなことじゃないでしょ。田村さんはどうなのよ」
−−私ですか?彼氏いますけど…うーん、凄い奥手な人だし。
「Hの時どっちが上になるかとか聞かれたらイヤでしょ?」
−−はは…まあ、こういうシチュエーションだと確かに。飲みに行きます?
 その方がお互い口も滑りやすくなるだろうし。
「私達はいいけど、ひよりんはサークルでしょ?後片付けとか大丈夫なん?」
「車が新木場なのよねえ…お酒飲むならウチに来た方が早いかも」
−−まあ、撤収作業とかはサークルの人に任せてありますし…私は
 電車ですけど、飲むとさすがに倒れそうかな…泊めて頂けます?
「いいわよ」
「じゃあ元つかさの部屋で。まあ、ウチ来るなら最初からそっち行けば良かったね」
−−明日はお二人は?夏休みだし、特にご用事はないです?
「夜バイトなのよね」
「少しネトゲでインしなきゃなんだけど、まあ別に。コミケの翌日とか、普通
用事入れないでしょ」
−−サークルは次回申し込みがあるんですけどね。冬は申し込み早くて。
「んじゃま、飲んで一眠りして朝食はデニーズ行ってつかさ見てニヤニヤして、
昼頃解散、って感じで」
「じゃあ一回新木場ね。東京駅の乗り換え面倒なのよね…」
「いい駐車場開拓しないとね。昔は武蔵野線でのアクセスだったからあの辺しか
知らないんだけど」
−−ああ、私も知り合いに聞いておくっスよ。目黒の方からだと大井町とかが
 いいっスか?
「よろしくー」
「こいつの運転おっかなくてさあ。混んでなくて、入りやすく停めやすいってのが
第一条件なのよね」
−−センパイの車っスか?
「ん、親のお古だけど、ウチ駐車場なくてさ、空き地に路駐になっちゃうから
基本的には実家に置きっぱなんだ」
「こっちは車ほとんど必要ないからね。荷物重いときくらい?」
「今日のために車を用意しておいたのだよ」
−−でも、センパイ今日の収穫その紙袋と鞄だけっすか?それくらいなら…
「いやー、若いひよりんと一緒にされちゃあ困るなあ」
「いや、ひとつしか違わないし」
−−私は宅急便で送っちゃいましたが、ダンボール2箱分が買い物ですね。
「すげえ」
「まあ、お金ある人なら普通だよ」
−−まあ、売上げが丁度懐にありますしね。普通ですよ。
「もう売上げ分配してるの?」
−−ウチはまあ、毎回これくらいは売れるだろ、って分はリーダーが前渡しで
 くれますね。買い子さんの分もあるし、どんだけ儲かってんだって感じですが
「まあ、売れてるとこは叩かれるし、色々大変そうだよね」
−−センパイ大学でアニ研入ったって言ってましたっけ。そっちでは何か
 ないんですか?
「いやあ、幽霊部員だし、サークル出てる人もいたけど、顔合わせても気まずい
だけだし」
「ホント人付き合い大事にしないよねコイツ」
−−じゃあ、そろそろ行きましょうか。新木場だったら秋葉来たの失敗だったかも
 ですね。
「まあ、帰る人とは逆方向になるから、新木場までは別に混まないでしょ」
「大丈夫、眠くない?」
「んー、疲れてはいるけどまだ眠くはないかな。それよりお風呂入りたいー」
「う、確かに少し…どころじゃなく汗かいたわよね」
−−あの、私もお風呂使わせて頂いていいですか?
「よーし、三人で入るかー」
「ちょっと!…ていうか、うちのお風呂じゃ二人でも厳しいわよ」
−−スーパー銭湯でも行きます?
「いやあ、それだとすぐ寝れないし」
「休憩所でガン寝しちゃう人とかいるよねー」
−−あ、ここは出しておきますので。
「え、いいわよ別にワリカンで」
「まあまあ、ここはお言葉に甘えておこうじゃないの」
「もう…後からかえって高くついたなんてことになりそうで怖いわ」


「かがみーん、駐車場代貸してー」
「ちょっと、マジで有り金使っちゃったの?」
「家賃はちゃんと家に残してきたんだけどねー」
「私達電車で帰ることになったらどうするつもりだったのよ、もう…」
「左側停められちゃったなあ…。こすらなきゃいいけど」
「どんだけよ」
「今日もはっぴー、はっぴー♪」
「こすって、ハニー♪」
「こすっちゃダメなんだってば!」
「バグってハニーっての、あったよね」
「センパイ古すぎます!」
「高橋名人ってさ、頭剃ってるのかな?」
「んー、全部ハゲちゃったわけじゃないと思いますけど、結構なとこまでは
進行してたんですかね」
「ケガとか病気とかで剃ってる人もいるんだから、あんまり言うと失礼よ」
「いやあ、わかってはいるんだけどね、半端な人はまあ、気に
してるんだろうなって解るけど、全部剃ってる人はネタにして欲しがってる
部分もあると思うよ」
「いっぺん指さしてバカ笑いとかしてみたいっスね」
「まあ、知り合いとかじゃなければそこまで面白くはないかも」
「自分で剃ってみろ」
「…センパイはそんなに変じゃないかもとか思ってしまったっス」
「かがみんがハゲたら笑えるよ」
「ハゲねーよ」
「遺伝要素が強いっていいますよね、親御さんとか親戚はどうです?」
「あー、うちのお父さん、少しヤバいかも」
「うちは父親も祖父も…ん、まあ大丈夫かな」
「あ、それより買い出しどこ行く?」
「アトレ閉まっちゃうかな?途中で入れそうなところあったら入っちゃおうか」
「んー、ちょっとナビ調べてみてよ」
「ピンポーン♪次の角を右でございます、ご主人様♪」
「ちょっと、どっち行ってんのよ!私が右と言ったらちゃんと右に曲がりなさい!
…まあいいわ、300メートル先を今度こそ右だからね!」
「は、はわわ!すみません、今のとこ違いました、右じゃありません、左です、
あああの、いえ、もう今から左に曲がっちゃダメです〜」
「…うるさい」
「萌えナビって、絶対出ると思ったけど、案外出ないんだよねえ」
「うーん、萌え系音声合成ソフトも出たし、いつ出てもおかしくないですけどね」
「ああ、もう、こういうのってナビより地図の方がよっぽど早いのよ、田村さん、
運転席の背中のとこに、あぁ、それそれ」
「かがみんも私の車に随分詳しくなったもんだ」
「トランクに漫画が一杯入ってることとかな」
「あれはウチから実家に置いてこようと思って忘れてたヤツだから、もう
ないってば」
「センパイ、痛車にしないんスか?」
「ん〜、小さいステッカー程度ならいいんじゃないかと思ってるんだけど」
「そんな車の助手席には絶対乗らないから」
「というわけで」
「え〜。だってパイオニアとかがまかつとかのステッカーは普通に
いるじゃないですか。kadokwaとかkeyならいいのでは?」
「まあ、文字だけならまだ…って、認めると絶対エスカレートするから」
「余計な知恵を身につけてしまいました」
「んーと、少し遠回りになるけどやっぱオオゼキしかないかな。あそこ遅くまで
やってたわよね?」
「10時までかな」
「お酒置いてたわよね」
「どうだっけ?ビールとか焼酎とかはあったと思うけど…」
「あ、私こだわらないんでビールと焼酎でおっけーですよ」
「ウチに何かあったっけ?かがみのウーロンハイが何本か?」
「貰い物のウィスキーがなかなか減らないんだけど、飲む?」
「高いヤツっすか?」
「なんだっけ、V…?」
「VSOPとかっスかね、ブランデーですよそれ」
「つかさがお菓子作るときにちびちび使ってたね。結構高いはず」
「お二人とも普段あまり飲まないんスか?」
「私は全然」
「私は…たまに寝る前に、かな。ウーロンハイをさらに烏龍茶で割って
すごく薄くしたの」
「弱いんすか?」
「私は弱い。かがみんは実は強い。つかさは実はもっと強い」
「私も大した事ないわよ。こなたが弱すぎなだけで」
「で、つかささんはうわばみ、と」
「いやあアレは強いというか…酒に飲まれるタイプというか」
「周囲に迷惑を振りまくタイプというか」
「そのくせ、ダウンしないし具合悪くなったりしないし、二日酔いも
少ないって、何なのかしらね」
「肝臓がめっちゃ頑丈なんでしょうかね」
「あー、太らない体質だしね」
「え、何それ、肝臓ってそういうの関係あるの?」
「どうなんだっけ?栄養を取りこむ効率がいい?」
「でもそれだと沢山栄養取りこんじゃって、太りそうな気もしない?」
「不要なものはさっさと捨てるタイプの肝臓?」
「アルコールとか脂肪とか?それ便利っスねえ」
「普段モノを捨てない癖に脂肪やアルコールをさっさと捨てるつかさ。
普段すぐモノを捨てる癖に」
「もういい、その先は言うな」
「双子でずっと同じもの食べてきたのに、体質が全然違うってのも
結構珍しいんじゃないですか?」
「うーん、そうなのかな。食べ物は…私のほうが甘党って感じ?
つかさは料理とか好きだったから割と好き嫌いなかったかな」
「頭を使う人は甘いものを欲しがるって言うねえ」
「頭を悩ます原因のひとつはあんたなんだが」
「その分甘い生活を満喫させてあげてるじゃん」
「あー…ノロケっスか?」
「食べ物以外では、つかさの方が睡眠時間は圧倒的に長かったわね…」
「子供のころから?」
「んー、そういえば中学くらいからかも。つかさが朝起きられなくて、
休みの日とかずっと眠い眠い言ってて…親とか最初病気なんじゃないかって
心配してたもん」
「精神的なものかな。つかさって基本甘えん坊さんだし、起きると怖い
お姉ちゃんが待ってるし」
「誰のことだ」
「いや、でも実際そういうとこあったよ。最初つかさと知り合った頃なんかは、
妙にオドオドしてるっていうか。慣れてくるとだんだんマイペースになったけど」
「あー、確かに、まあ。うちはお父さんが少し怖いとこあったのよ。私は、まあ
置いといてもお姉ちゃん二人も少し年離れてるし」
「私は大人の人が怖いみたいなことって感じたことなかったし、だからまあ、
こんな感じなんだけど。かがみんはやっぱ、お姉ちゃんなんだから、怖い人から
妹を守らなきゃ、強くならなきゃ、みたいなところとかがあったんじゃ?」
「どうかな…そこまでの自覚はないと思うけど」
「そして強くなったら肝心の妹からも怖がられてかがみん涙目」
「だぶだぶだぶ」
「うっさい!…って、そのだぶだぶって何?」
「ネット用語でダブリューだよ。台詞の後にカッコで笑い、ってのあるでしょ?
それをネトゲとかで省略して、わらい、の頭文字のダブリューだけで表現して」
「ダブリューが口で言う場合だぶ、って略すんです」
「いやあ…それは一般人には通じないだろ…」
「わわわって読む人もいるね」
「俺の忘れ物〜♪」
「ちょ、白石」
「ラノベとラジオネタはわかるんだよね」
「まあ、だぶだぶだぶは、元々インターネットのワールドワイドウェブでの
呼び名があったから、ってのがあるんですよ」
「おぉ、そういえば」
「URL手打ちとかあんましないですもんね。昔はえっちてぃーてぃーぴー、
ころんすらすら、だぶだぶだぶぽちの、とか言ったもんですが」
「そうそう、CMとかでもさ、URL言わないで検索ワード言うわよね」
「検索!」
「健作!」
「森田?」
「かがみん、古っ!」
「う…正直すまんかった」
「かがみさんの守備範囲って、わかりづらいですね。基本的には一般人っぽいけど
時々なんかこっち側の、しかもディープなのがポロっと出るみたいな」
「なんか、時々こいつのが伝染るだけで、基本的に一般人なんだってば」
「なんだってヴぁ」
「ヴぁ」
「何よそれ」
「なんだっけ?何かのアニメでそういう喋りのキャラがいたんだよね」
「高校ん時の知り合いでちょっと今のに似てるヤツがいたなあ」


「買い物、これくらいでいい?おつまみ少ない気もするけど」
「疲れもあるし、肉とか油物いっちゃいましょうよ、唐揚げとか」
「かがみんはお酒飲むのに甘いもの買いすぎ」
「いいでしょ、人それぞれで!カロリーはこっちの方が少ないんだから!」
「ふむ…かがみさんは、運動とかしてます?」
「え…いや、最近は全然…」
「糖分は脂肪に比べて瞬発能力にいいんですよ。少しハード目の運動して
筋肉つければ、体重自体はそんなに変わらなくても、キュッっと締まった
体になっていいっスよ」
「う…やっぱりぷよぷよしてるように見える?」
「PUYOPUYOするな!」
「…は?」
「あ、失礼。まあ、体質のこともあるので一概には言えませんが、ダイエットって
言ったらお菓子よりまずご飯を減らす感じになってるのでは」
「んー、まあ…どっちかと言えば」
「ご飯が好きなら持久力、お菓子が好きなら瞬発力って言いますよ」
「とはいえ…ジョギング程度しか思いつかないなあ」
「ジョグとか水泳は瞬発と持久の中間くらいなんですよね。普段運動しない人が
急にやると心臓に負担がかかるから、って感じで徐々にやるのにいいかもですが」
「瞬発ってどんなのがいいの?」
「ビリーとか」
「あぁ…アレね、キツいのよねー」
「まあ、球技とかなら面白くていいですよ。テニスとか」
「うっ…テニスには嫌な思い出が…」
「んー、小人数で気軽にできるハードな運動って、他にあまりないかもですねえ
…あとは…Hとか」
「ちょ…」
「冗談ですよ、ちなみにHはやり方によりますが、どっちかというと持久かも」
「少し本気にしちゃったじゃない」
「唐揚げと焼き鳥と揚げ出し豆腐買ったー」
「まあ…細かいの気にするのは明日からということで」
「そうよね〜」


「…あら?つかさ?」
「あー、お姉ちゃん、電話したのに全然繋がんないんだもーん」
「あ…ホントだ」
「こなちゃんも」
「あー、昼にメール来てたっけ。そうそう、今晩つかさが来るって」
「遅いわよ!」
「あ、どもども、お久しぶりっスー」
「あー、ひよりちゃん、久しぶりー、どうしたの?」
「やー、会場で会って、飲みに行こうって話になりまして」
「まあ、とにかく上がりましょ。もう、ずーっとお風呂入りたくて」
「ん…少し汗臭いかな」
「もう凄かったわよー、毎回毎回、二度と行かないとか思うのよねー」
「その割に付き合ってくれるんだけどね」
「実はやおい本とかこっそり買ってるんじゃないっスか?」
「こっそりというか、最近は開き直って割と堂々と」
「こらぁ!べ、別にそんなんじゃなくて!絵も綺麗で、話も面白いから!
つい先が気になってっての、あるじゃない!」
「まあまあ、この面子で言い訳は通じないよ」
「う、ううぅ…」
「やおい?」
「つかさは知らなくていい!」
「つかさ、今日は彼は?」
「あ、まさくんは帰省してて今週は居ないの」
「あんたもたまには実家に顔出しなさいよ、姪っ子の顔もまだ見てないんでしょ?」
「あー、なんだっけ、るみちゃん?」
「そうそう。可愛いわよ」
「やっぱりお姉ちゃんに似てる?」
「うーん、どちらかと言うと義兄さん似かなあ」
「あ、にーさんだって、何か新鮮」
「うちは女ばっかだったからね…お父さんが同居を喜んだのもわかるわ」
「そうそう、こないだ、ゆきちゃんから電話あったよ」
「おぉー、みゆきさん、何だって?」
「夏休みで実家に帰ってきてるから、会えないかって。私もあんまり帰って
ないのって言ったら、東京でもいいですよ、だってー」
「今日でいいじゃん、呼ぼうよ」
「えー?大丈夫かなあ」
「電車もあるし、駅まで車で迎えに行くからってさ」
「うーん、じゃあ、電話してみるね」
「ひよりんは大丈夫?」
「みゆきさんっスよね、覚えてますよ、萌えキャラっスね!」
「なんか、3人で飲むはずがどんどん増えてくなあ」
「そうだ、今日パティも居たっスよ」
「うそ、アメリカからわざわざ?」
「今、旅行会社でバイトしてるらしくて、ツアーの団体さん引き連れて
ましたけど」
「昔だったら団体さん置き去りで買い物巡りしちゃいそうだけど、成長したねえ」
「いや、初日はそんな感じで怒られたらしいっス」
「やっぱり」
「なんならパティも呼んじゃいます?」
「え?仕事でしょ、大丈夫なの?」
「まあ、添乗員さん何人かいるって話だし、夜は自由だから飲みに行きましょう
って言われたんで」
「えーい、呼んじゃえ呼んじゃえー!」
「じゃあ、もういっそチアのメンバー同窓会にしちゃおっか?私、みさおと
あやのに電話するからさ、あんたゆたかちゃんとみなみちゃんに聞いてみなさいよ」
「よーし」
「でも、この部屋、えーと、何人?10人だっけ、入るかなあ?」
「私とこなたの部屋も使うわよ、布団はないけど、まあ雑魚寝で良ければ
10人横になるくらいはいけるでしょ」
「ゆきちゃん8時頃には来れるってー」
「パティは10時くらいで良ければ、とのことっス。明日の始発で戻るとか」
「体力あるなあ」
「待ち合わせどうしましょ?」
「目黒駅でいいよ、出てすぐ松屋あるの、どっち口だっけ?」
「みなみちゃんの車で来るって、あそこの空き地、最近誰か他に停めてたっけ?」
「一台くらいいけると思うけど」
「つかさの彼って、駐車場契約してる?」
「アパートの裏にあるんだよ、住人はプラス5千円」
「ほほう…彼氏居ない時に利用させて貰おう」
「うーん、帰省の時は飛行機だから、今は車停めっぱだよ。鍵預かってるから、
今日乗ってきても良かったんだけど…乗ってこなくてよかったみたい」
「まあ、あそこの空き地使えなかったら…角のパーキング?夜間は1800円…
だっけ」
「みさお繋がんねー、あやのに任せて、ちょっと私お風呂先入るわ」
「あやのさんから電話あったら、取っちゃうよ」
「あ、よろしく」
「えーと、最初に来るのはみゆきさん、かな。つかさ、迎え行ってくれる?
っていうか、晩御飯は?」
「まだだけど、お酒飲むなら何か買ってこようかな?」
「人数も増えちゃったし、ビールとか焼酎とかも適当に買ってきて」
「はーい」
「お金後でワリカンするから、レシート貰ってくるの忘れないで」
「わかったー。じゃ、行ってくるね」
「ひよりんはお金大丈夫?」
「私はまだまだ余裕っス。売上げもあるから、多めに出してもいいっスよ」
「まあ、沢山飲んだ人に多めに出させるから、その辺は後でいいよ」
「つかささんが強いんでしたっけ」
「今日の面子では…みんなそんなに飲まないかな?」
「ですね…ときに、今のうちに少し聞きたいことが」
「やっと二人きりになれたね」
「違っ…!」
「そんなマジに逃げなくても…」
「や、まあ。で、この鍵付きのキャビネットが凄く気になってるんですが」
「あぁ、そこに鍵あるから、中見てもいいよ」
「いいんスか?なんかヤバいもの入ってるんじゃないかとか思ったんですが」
「入ってるよ。かがみんがお風呂から出てくるまでに戻して閉めておいてね」
「ちょっ…」
「私ちょっとトイレー」
「ちょ、待っ、一人にされても…開けていいものかどうなのかマジ悩むんすけど!
いや、別に本とか読んでればいいんですが、っていうかまあオタクとして人の
本棚って気になりますよねー、とか言って、このキャビネットの中はオタク方面の
ヤバいものなのか、お二人の関係上ヤバいものなのか、もしかしてお金とか
入ってたら私も対応に困るんですけど!」
「あら?みんなは?」
「えーと、つかささんはみゆきさんを迎えに。センパイはトイレ?」
「トイレ居なかったわよ?自分の部屋の整理でもしてんのかしら。さすがに人
入れなくなってるからなあ」
「あ、この部屋がセンパイのライブラリじゃないんですか」
「こっちは…二軍?とか言ってたけど、常に手元に置いておきたいほどでは
ないモノ、って感じらしくて」
「おお、書庫ですね、憧れっス」
「そうなのか…良く解らんわ」
「ああ、電話鳴ってましたよ、取って良いのかわかんなかったんで待ってました」
「ああ、あやのからね、わかった。かけ直すから。んーと…」
「で、かがみさん、この鍵つきのキャビネットは何ですか?」
「ぶー!」
「解りやすい反応っスねー」
「いや、違うの、貴重品とかよ!あぁもう、お客さん来てるのに鍵出しっぱなしで
もう…」
「ああ、そうっスよね、通帳とか現金とか」
「そ、そうそう!」
「ローションとかバイブとかが入ってるんスね」
「ぶー!あ、あぁ?もしもし、ごめ、違うの、ちょっとくしゃみよ、くしゃみ。
で、みさおは?あ、来れる?良かった、何時頃になるかな?」
「あぁ、ごめんごめん、電話のこと忘れてたよ」
「…センパイ」
「ん?」
「かがみさん、可愛いっスね」
「でしょ」
「コラ、そこー!え、ああ、こっちの話、で、え?うんうん解った。目黒駅、
わかる?」
「ゆきちゃんきたよー」
「お久しぶりです、皆様」
「おぉ、早かったねえ。久しぶりー元気?」
「えぇ、お陰様で。やっぱりこちらは暑いですねえ」
「あ、やっぱあっちは涼しい?」
「ええ、たまに暑い日もありますけど、湿度がさほどでないので、過ごしやすいと
いいますか」
「そうなんだー」
「あ、ごめんごめん、みゆき、久しぶり」
「かがみさん、お久しぶりです」
「お姉ちゃん、お酒とおつまみ買ってきたけど、他の人ってどうかな?」
「あー、みさおはあんまり飲めなかったはず…あやのってどうだっけ?」
「お酒弱い人多いなあ」
「日本人は世界一アルコールに弱い民族だとか言われていますね」
「あ、私お風呂入っちゃうね」
「みゆき、アルコールって肝臓で分解されるのよね、甘いものって肝臓に
悪いのかしら?」
「え?いえ、ちょっと専門外なので詳しいことは解りませんが、適量なら
そんなことはないと思いますよ」
「いや、今日ダイエットの話しててさ、アルコールに強い人って食べても
あまり太らない印象とかない?」
「うーん、太っててお酒が強い人も多いと思いますし、肝臓機能と脂肪の
関係については…長くなるので割愛しますが、結局脂肪や糖分は摂り過ぎると
良くないけど、適量は健康に必要、という結論になるんですよね」
「ダイエットにしても適度に運動して、栄養バランスを整える、ってことかあ」
「健康が一番ですから。…あの、前から思ってたんですが、かがみさんは別に
全然太ってるように見えないのですが、体重をお気になさり過ぎなのでは
ないでしょうか」
「うーん、でも運動不足はやっぱりね」
「お姉ちゃんも、またテニスすればいいのに」
「テニスやってらしたんですか?では結構筋肉の下地は残ってるのかも」
「いや、ホント、1ヶ月もやってないから」
「そういえば嫌な思い出って言ってましたよね」
「なるほど、ではお散歩などでも、一日30分程度するといいですよ」
「持久系?」
「?」
「あぁっ、専門家に聞くとかズルいっス!素人が知ったかぶりしてんじゃ
ねーよとか思われてるっス!」
「え、えーと、どういうお話だったのでしょう?」
「ハードな運動して筋肉つけた方が見た目的にいいのかなって」
「どうでしょう?普段あまり運動しない人がいきなりやるのは心臓への
負担が…」
「ホラ!私と同じこと言ってるっス!」
「…ま、まあ、女性は筋肉がつきにくい人が多いので、ダイエットは
脂肪を落とす方が早いとも言われますね。実際は筋肉って結構重いので、
筋肉つけたら体重が増えたって数字に捕らわれて運動を止めてしまう人が
多いのではないかと思うのですが」
「う…運動したらやっぱり体重、増える?」
「あ、嫌な思い出って、そこだったんスか」
「私は体重全然変わんなかったよ。筋肉もついてないけど」
「そうですね…かがみさんくらいでしたら、皮下脂肪もそんなに
あるように見えないので、増えると思いますよ。でもそれは数字上の
問題で、皮下脂肪とか内臓脂肪、中性脂肪などは減るわけですから…
あ、でも、脂肪もないとダメなものなんですよ、最近はとにかくダイエットが
ブームで悪役みたいに言われていますけど」
「まあ、医者はそう言いますけどねー」
「あー、もう、滅入ってくるからこの話題やめましょう、そろそろゆたかちゃん
達も来るんじゃない?」
「最近は、歯科医が増えすぎて経営が苦しいところが多いみたいですね」
「え?何?また虫歯とか?」
「ああ、いえ、別の話題ということで、この前見たニュースなのですけど
…場違いでしたか?」
「あ、いやいや、ダイエットに何か関係あるのかなとか思っちゃって。
そういえば高校の時、みゆきってずっと歯医者行ってた気がするわね」
「いえ、むしろ行くのが嫌で逃げてたからずっと行かなきゃいけなくなって
しまったわけで…お恥ずかしいです」
「まあ、ダイエットも食べたくて、でも食べちゃダメって感じで、同じような
感じなのかもね…って、だから折角話題変えたのに」
「かがみさん、自爆っス」
「健康関連のお話は良くないみたいですね、すみません」
「いや、みゆきさんそこ謝るとこじゃないっス!折角専門家なんだし、
むしろ色々聞きたいくらいで…視力矯正とかってどうっスか?」
「レーザー治療手術ですか?手術件数は伸びているという話ですし、
機械や技術も進歩してるので、お金がかかってもなるべく大きな
病院で相談してみると良いと思います。できれば最新の機器を
そろえているようなところで。レーザーで角膜を剥がす感じなの
ですけれど、上手く焦点を合わせられなかったり、あと、感染症の
危険もありますね。…私も目は悪いんですけど、医者のなんとやらで、
どうも怖くて診察受けた方がいいのかなと思いつつ…」
「あー、でも視力が大事な仕事もあるじゃない、小さいものを仕分けるとか」
「ボクシングとかの網膜剥離って、治らないんスか?」
「あ、網膜剥離の治療もレーザーですね。でも、あれはどちらかと言うと
症状の進行を止める感じなので、完全な治療となると、まだ成功率は
低めかもしれません…ボクサーの方とか、致命的なのですよね」
「ねえねえ、女医さんって、やっぱりまだ少ないの?」
「そうですね、少しずつ増えてるとは聞きますが」
「女の方が血とかに強いって言いますよね」
「え…まあ、言いますけど、私はやっぱりあまり…」
「ちょっと、それで大丈夫なの?」
「いえ、やはり実際に患者さんに向かい合うと、なんと言うか、気持ちが
切り替わるんですよね」
「腑分けとか、やりました?」
「ええ、まあ、なんとか」
「新人さんで吐く人って多いんだってね」
「お恥ずかしながら…その一人でした」
「あとあと、男子学生が精液出して顕微鏡で見るとか、浣腸の実習は
グループで学生同士でやるとか」
「ちょっと、下ネタに走りすぎ!」
「ははは…そっか、お医者さんだから、そういうの必要なんだ」
「ええ、まあ、ありましたけど…でも、やはり人様の命をお預かりする
仕事に就こうとしてるわけですから、汚いとか気持ち悪いとか、そういうんじゃ
ないんですよ」
「みゆきは相変わらず優等生ねえ」
「まあ、やはり、医者というのは儲かるという一般の方のイメージが強くて、
だからこそ傲慢なイメージ持たれないよう発言には常に気をつけるようにとか
言われたりもしますし」
「って、キャラ作ってたんかい」
「こんばんはー」
「こんばんは、お久しぶりです」
「あぁ、ゆうちゃんとみなみちゃん、こんばんはー」
「久しぶりー、元気だった?」
「ええ、お蔭様でここ何年かはもう全然元気なんですよー」
「みなみちゃんとか、看病できなくて逆に寂しいんじゃないのー?」
「いえ…健康が一番ですから」
「内臓が悪かったのでなく、基礎体力が低めだったという感じなのでしょうか?」
「うーん、お医者さんとかもそんな事言ってました」
「まあ、今日はお医者さんも居るから、気兼ねなく騒ごう」
「いえ、私はまだ医師免許ないので…」
「ひよりん、お風呂開いたよー、って、ゆうちゃん早かったねー。みなみちゃんも
久しぶり」
「こんばんはー」
「お久しぶりです」
「あ、じゃあ、すいません、私お風呂借りますね」
「タオルはこれ使っていいから。着替えとかは?」
「あぁ、さっき買っておいたんで、大丈夫っス」
「今日は皆でどこかお出かけだったの?」
「私とかがみとひよりんと…あとパティはコミケで」
「こ、コミケだったの?」
「つかさのトラウマ発動っ」
「もう、夏は暑いし冬は寒いし、せめてもう少し混んでない時間に行きたいもんだわ」
「やー、空いてる時間って、もうどこも売り切れってことだから。買うのが目的で
行ってるのに買えなかったら意味ないじゃーん」
「あ、でも冬でしたらこちらも一番寒い時期に雪祭りがありますので」
「あー、さすがにそっちのが寒いかしら」
「今日はパティちゃんが来てるんだって?」
「そそ、なんか観光ツアーのコンダクターらしいよ」
「日本語が出来るって、やっぱ凄い特技になるんでしょうね」
「漫画とかアニメがアメリカで作られてたら私も今頃英語ペラペラだったのかなー」
「いや、ディズニーとかアメコミとかあるだろ」
「っていうか、それ以前に、パティちゃんって凄く頭いいんだよ。今ハーバードだよ?」
「うそ、マジで?」
「へえ…お凄い方だったんですね」
「ハーバードって、あれだよね、アメリカの東大みたいな感じだよね」
「東大って…や、まあそんなようなものだけど」
「じゃあ私は駄目だあ」
「あっさり諦めすぎだろ」
「うちの高校のホームページにね、去年の卒業生の進路一覧が書いてあって、
ハーバード大学、一名って」
「交換留学生も卒業生にカウントしてるんだー」
「あ…あやのからだわ。ちょっと私駅まで迎えに行ってくるね」
「行ってらー」
「えーと、食べ物少し足りない?あとソフトドリンク欲しいかな」
「そうそう、こないだかがみが結婚式で貰ってきたコーヒーメーカー出そう」
「お酒の前のコーヒーですか?」
「面倒だからって結局インスタントでさ、豆が減らないのだよ」
「あ、あの豆をごりごりーってするの、あるの?」
「コーヒーミルはさすがにないよ。挽いたのを買ってきてあるの」
「そっかあ…あれ、いっぺんやってみたいんだよね」
「あ、私の実家にありますよ。機会があったら是非」
「ホント?ゆきちゃんいつまでこっちにいるの?」
「日曜までですね。月曜の朝の飛行機で帰ります」
「じゃあ…うーん、土曜とかにお邪魔しちゃおうかな」
「つかさ実家は?」
「あ…うーん、ちょっと気まずいかも…ははは」
「親御さんと喧嘩してるんですか?」
「ん、ちょっと彼氏のことでねー。あ、そうそう、私の彼が実家北海道だよ」
「そうなんですか?札幌でしょうか?」
「んーん。なんか、何ていってたかな、北海道の真ん中らへん」
「旭川か…富良野?帯広でしょうか?」
「あ、それそれ、富良野。北の国からってドラマの舞台になったんだよね」
「私も一年の時に旅行に行きましたよ。…でも、北海道は広いので、あまり
良いところだからってちょくちょく行くとか言うわけにはいかないんですよね」
「札幌まで電車で4時間って言ってたよ。ホテルやってるって言ってたから、
もしかしてゆきちゃん泊まったかも?」
「あ、いえ、大学の研修設備に泊まったんです。北海道中にあるんですよ」
「へー、じゃあ旅行とか行き放題なんですか?」
「そうですね、休み中とかはサークルの合宿で埋まっちゃう感じです」
「あー、合宿とかいいなあ。やっぱり運動部とか入れば良かったー」
「ゆたかは…さすがに運動部はやめた方が…」
「今年の冬ね、スキーしに行こうって話してるの。札幌も寄るから会おうよ」
「いいですね、お正月と重なってしまうと行き違いになってしまうかもしれませんが」
「そっか、年二回帰ってくるって、結構大変じゃない?」
「そうですね、去年はお盆は帰れませんでしたし」
「コーヒー入ったよー。砂糖と、ミルクは牛乳ね」
「カルーアにしちゃおうかな、ウォッカとかない?」
「ウォッカはさすがにないなあ。ブランデーじゃ駄目?」
「あー、これ私が貰ってきたやつ?まだ残ってるんだあ」
「冷蔵庫に入れっぱだったんだけど大丈夫?」
「うん、これは涼しいとこに置いておけば何年かは平気なはず」
「というか、結構冷蔵庫占拠しちゃうから今日開けちゃおうよ」
「カルーアはブランデーでもいいんだけど、ウォッカの方がカクテルとか
作るのにレシピ多いんだよね」
「ソルティドッグとかモスコミュールとか」
「あ、みなみちゃんもカクテル結構詳しいんだ?」
「最近カラオケBOXでバイトしてまして」
「スクリュードライバーに目薬入れたりとかしてる?」
「え…いえ、聞いたことないですが…美味しくなるんですか?」
「ウソウソ、冗談だよ、アルコールに目薬って、凄く悪酔いするんだって」
「スコポラミン系の目薬ですね。今は売ってないそうですよ」
「あ、そうなんだ?」
「ええ、本来目薬のスコポラミンが副作用で眠気を催す、というのが
歪んだ形で広まってしまったので、製薬会社が使用中止としたようです。
まあ、今は市販薬でも睡眠導入剤に近いものがありますしね」
「あ、デパスってのを一時期飲んでたよ」
「え?ベンゾジアゼピン系ですか?あれは市販薬じゃないですが」
「あー、そだっけ」
「お医者様から処方されたのわけではないのですか?えと、一応、
そういうの法律違反でして…」
「あー、まあまあ、昔の話だし、ここは不問ってことで」
「うん、その、あの時はほんとごめんねえ」
「もう…あの、本当に眠れないとか寝つきが悪いとかだったら、
お医者様に罹ってくださいね。体質とかで、ある人に処方したお薬が
別の人には悪い副作用があったりしますので」
「えと、ド、ドラッグっていうの?東京の大学生って、やっぱりそういうの
あるのかな」
「いえ、その、覚醒剤とかそういうのではないのですが…」
「スピード?」
「ちょ…泉さんまさか!」
「ああ、ごめんごめん冗談だよ、やったことなんかないってば」
「え?…え?」
「…ゆたかはあまり知らなくていいかも」
「ゆうちゃんも昔は結構色々薬飲んでたよね。いや、ヤバいのとか
そんなんじゃないけど」
「うん、でも、やっぱり強い薬だから気をつけてみたいに言われると
怖くて飲めなかったりしたなあ」
「えーと、飲まないで我慢しちゃうのもやはり良くないんですが…
でも、十年前と今では薬に対する考え方も違ったりするので、まあ
結果的に良かったならそれはそれでいいのかも知れませんね」
「ただいまー」
「おーっす、久しぶりー」
「こんばんはー、お邪魔しますー」
「あー、みさおちゃん、あやのちゃん久しぶりー」
「こんばんはー」
「こんばんは」
「おー、さすがに座るとこねーな。ひーらぎの部屋いくか?」
「もうすぐみんな集まるから、乾杯くらいしましょうよ。ちょっとハミ出るけど
こっちのテーブルに座って」
「コーヒー入れるよー」
「あら?飲み会って聞いたんだけど…」
「お酒飲む前にコーヒー飲むといいんだって」
「へえ、そうなの、みゆき?」
「え?うーん、カフェインは頭痛に良いので、飲むと頭が痛くなるタイプの人なら…
どちらかというと、二日酔いに効くという感じだと思いますけど」
「高良さんは本当に何でも知ってるねー」
「うんうん」
「いえ、その、医大生というと、こういう一般の方からよく聞かれるような
家庭の医学のようなことは真っ先に覚えますので…皆さんが大学で学んでる
専攻分野のようなお話ですので、特別博学というわけでは」
「まあでも、健康のことって普通の人にはどうして?どうなの?っていうの
多いわよね」
「そうですね…平易にご説明できればいいのですが、場合によっては必ずしも
そうでなかったりすることも多いので、どうしても一概には言えない、って
ニュアンスになっちゃいますね」
「まあまあ、深刻な病気ってわけじゃないんだしさ、何か間違ってても責任取れ
なんて言わないから」
「というか、みゆきさんが気にしちゃうからそっち系の話は自重しようか」
「俺自重」
「あ、ひよりん。お風呂長かったねー。湯船で寝てたんじゃないかと思ったよ」
「ははは…実は少しウトウトと。あ、日下部さん、峰岸さんこんばんは」
「おーっす」
「こんばんはー」
「随分狭くなってきちゃいましたね、あとはパティだけ?」
「すげーよな、こーゆー思いつきの企画ってさ、ふつー一人や二人、めんどいとか
忙しいって来れなくなるもんだけど」
「北海道とアメリカから来てる人もいますし、もうこんな機会ないかもですよねー」
「って、パティからメール来てましたよ、すいません私行ってきます」
「あ、駅までの道わかる?」
「えーと、左行って、真っ直ぐ行ったら大通りですよね。そこをまた左で」
「そそ。凄いね、夜道だったのに一回で覚えちゃったんだ」
「いやあ、むしろ戻りが不安なので、迷ったら電話しますね」
「りょーかい」
「パティ来たらさ、外でみんなで記念写真撮ろうよ」
「そうね、あんたのデジカメ、使える?」
「ちょっと引っ張り出してくる。そういえば最近使ってなかったなあ」
「柊ちゃんと泉さん二人で住んでるのよね、3LDKだと結構広くていいわねー」
「家賃ってどんくらい?」
「14万5千」
「高っけー!あれ?でもワリカンなら普通か?」
「でしょ?ね、そういえばこの中で一人暮らしって、えーと、つかさとみゆき…だけ?」
「うちは6万円だよ」
「都内でワンルームならそんなもの?山手圏内だから少し安いのかな?」
「あ、うちは目黒からさらに二駅なの。駅からも結構歩くし」
「東横線に乗るのもあんま変わらない感じよね」
「えーと、私は8万円です…両親が、どうしても入り口のセキュリティしっかりしてる
マンションにしろって」
「すげー、ブルジョワじゃん」
「札幌って、普通の学生用ワンルームってどれくらい?」
「そうですね、場所にもよりますが…大学近くとか駅近くならそんなに変わらない
ですよ、4〜5万円かと」
「埼玉と同じくらいなんですね、やっぱ結構都会だから」
「デジカメあったよ、ちょっと試し撮りするね」
「じゃあみんなポーズとってー」
「いや、本番はパティが来てからでいいから、普通にしててよ」
「デジカメ小さいわね、いつ買ったの?」
「2年前かな?それまで携帯でいいやとか思ってたけど、なんかこれ欲しくなって」
「可愛いよね」
「さらりとノロケっすか」
「ちょっと!そっちじゃなくて、カメラが、カメラが!」
「おー、ひーらぎがイジられキャラになってる」
「ほんと、泉さんと暮らすようになって変わったんじゃない?」
「わ、私は昔から変わってないわよ」
「そうかな?結構変わったと思うけど」
「身内が言ってるんだから間違いねーな」
「つかさは余計なこと言わなくていい!」
「でもね、実際お姉ちゃん達みてると、なんかいいなって思うよ。私もみなみちゃんと
暮らしたいなって思ったもん」
「ん…学校が実家から通えるならそれに越したことないと思うけど…その、嫌って
わけじゃないけど…」
「おやぁ?新たなカップル誕生ですか?」
「この二人、怪しいなと思ってたけど、やっぱりぃ?」
「泉家の血筋は百合家系なのかー?」
「ちょっと、あんたら」
「ハーイ、みなさん、おひさー!」
「パティ、久しぶりー」
「こんばんはー、これでほんとにチアの10人揃ったわね」
「じゃあ、早速記念写真撮っちゃおう、みんな外出てー」
「Oh、記念写真!折角だから、チアのフォーメーションで!」
「どこの?最後のとこ?」
「アングル的に難しいかな?けーつろーんんんんんのとこの、全員腕上げたとことか」
「一列になるとこは…奥の人切れちゃいそう?谷間にダーリンダーリン、のとこは?」
「どんなんだっけ?」
「アレ、ビデオであたしとあやのが見切れてたんだよなー」
「だだだだだーのとこでいいんじゃ?」
「えーと?トンコツハリガネ…あ、あそこかあ」
「ちょっと上からのアングルがいいよね、そこの塀にカメラ置くからちょっと待って」
「えと、私とゆきちゃんが一番奥、だっけ?」
「そうそう、お姉ちゃんとかがみさんが一番前で」
「あー、パティまた背伸びた?少し屈んでー」
「ビデオで見ると、身長差が結構目立つんですよね」
「そうそう、私みなみちゃんの後ろで結構隠れちゃうんですよ」
「…ごめんなさい」
「いやいや、まあまあ」
「おっけー?えーっと、ゆうちゃん、ちょっとその立ってるとこに印つけて、
一回こっち来てくれるかな」
「え、はーい」
「カメラ動かさなくていいから、ちょっとここ覗いててね」
「うん」
「えーっと、どう、このへん?ゆうちゃんは私の右手の上から頭出す感じで」
「うん、おっけー」
「じゃあ、戻ってもっかいー」
「はーい」
「じゃ、5秒後にフラッシュだよ、せーの」
「ごー」
「よーん」
「さん」
「にー」
「いーち」
「どう?」
「ちょっと待って、動かないでそのまま待機ー」
「結構腕疲れるよね」
「まだー?」
「ん、おっけーでーす」
「ふぃー」
「ほらほら、みさおだけウィンクしてるのがあの時と一緒」
「えー?あそこ、ウィンクじゃなかったっけー?」
「驚いた?私だけ?って?」
「あはは」
「暑ー、じゃ、早く戻ろうかあ」
「クーラー三台ともフル稼働って、ブレーカー大丈夫?」
「あー、ヤバいかも…でも、ちょっとやってみようか」
「やー、でも懐かしいな。あん時のビデオとか今ねーの?」
「ビデオデッキがないのよ。こなたのPCで見れるけど」
「10人は入れないなあ」
「いや…これは10人どころか頑張って二人っス」
「じゃあ、エンドレス再生しとくから適当に二人ずつどぞ」
「懐かしいネ、私今でも時々観てますヨ」
「恥ずかしいからあんまり他の人に見せないでねー」
「何言ってるんデスか、見せるためのものですヨ!」
「うー…」
「でもこれ、すげー歌詞だよなー」
「最初聞いた時、何て言ってるのかわかんなかったわよ」
「カラオケで歌おうとしたんですが、これアニメソングだったんですね」
「そうなの?何てアニメ?」
「いや、えーとその頃流行ってたんスよね」
「当時はサイコーのモエモエアニメデシター」
「カラオケで聞くと、最初のとこのベースがカッコいいのよね」
「あーいまーいさんせんち、そりゃぷにってことかい?ちょ!のとこね」
「らぴーんぐがせーふく、だぁふりってことない?」
「ぷ!」
「がんばっちゃ?やっちゃっちゃ?」
「そんとっきゃーって、ここわかんねーんだよな」
「その時はキャッチアンドリリース、を縮めて省略した感じですね」
「そんとっきゃーっちゃんどりりーすぎょ!」
「あ、せ」
「ふー!」
「あ、せ」
「ふー!」
「のたにまに」
「だーりんだーりんふりーず!」









































「とうとう、ここともお別れね」
「ん。何年だっけ、18の時から、リフォームが32の時?」
「で、半年開いてまただから30年以上住んでたのね」
「結局引越ししなかったよね。もう何回もあっちに住もうこっちに行こうって
なったのに」
「家賃考えたら千葉のほう住んでも良かったのよね。月一万安かったら…
うわ、400万円以上違ったんだ」
「まあ、これからは家賃なくなる代わりに、自分らでリフォームとか考えなきゃ
だよね」
「うーん、築何年?20年で、前のリフォームが10年前?そろそろしなきゃなの?」
「屋根だけでも10年おきに直した方がいいって言うねえ。まあ二人であの家なら
二階使わなくてもいけそうだけど」
「引っ越す前に建て直したほうが良かったのかしら…」
「うーん、本格的にダメになる頃にはもう私たち死んでると思うけど」
「これからどうなるのかしらね。お互い出不精なんだし、月一くらいで旅行とか
行くようにした方がいいのかしら」
「あ、私沖縄行きたいー。石垣島ー。イリオモテヤマネコー」
「いや、今寒いからそう言ってるけど、夏になったらどうせ暑いのになんで南に
行くんだみたいなことになるんじゃないの。海水浴って年でもないし」
「かがみにセクシー水着を着て欲しい」
「そういうのは20年前に言って欲しかった」
「大丈夫大丈夫、かがみならまだいけるって!」
「心にもないこと言うな。さすがにもう水着ってだけで恥ずかしいわよ」
「そういやさ、沖縄って、まだ平均寿命60以上なんだってね」
「それって、昔から沖縄住んでる人でしょ?東京の人間が今から移住したって無駄よ」
「暑さでかえって早死にしちゃいそうだね」
「まあ…ホント、私たちはラッキーだったのかしらね。私の収入でなんとかやって
いけたし」
「昔はね…いや、申し訳なかったと思ってるのよ、かがみにもお父さんにも」
「いいわよ、今更…なんとか退職金も出たし、二人であと15年は大丈夫そうだし」
「今は、70まで生きたら新聞に載るらしいよ」
「昔の平均寿命じゃないの…本当に、いっそ外国移住すれば良かったのかもね」
「無理無理、オーストラリアに移住した人とか、全滅だったみたいだし」
「そうね…今はもう、外国は…って感じだけど、あの頃はね…」
「まあ、もう今は、ホントいつ死んでもおかしくない時代だからさ、日本離れない方がいいよ」
「国内旅行かあ。沖縄以外は?行きたいとこある?」
「んー、でも暑くなるから北、ってもね…」
「あ、うん…いや、北海道とかはともかく、福島のあたりとかさ」
「北海道は…ひどかったみたいだね」
「もう言うな…仕方なかったのよ」
「つかさの時だってさ、もしかしてこれなら北海道行った方がマシだったのかなとか、
どうしても考えちゃうんだよ」
「つかさの事は…もう、どうしようもないって、あの時結論出したじゃん」
「…うん。ごめん」
「私だって去年甲状腺やっちゃったしさ、もう柊家には頼れないし…ほんと、
あんたに長生きして貰わないと」
「えー?無理だよ、不健康ってったら絶対私の方が先に死ぬじゃん?」
「だって、あんたんとこはまだゆいさんが元気でしょ?私なんてもう、親戚いないんだから」
「それこそ無理だよ…ゆい姉さん、私より6つ上だよ?なんであんなに元気なのか
不思議なくらいだもん、絶対こっちが看取る感じになっちゃうって」
「そうか…そうよね、パートナーが生きてるだけで、私たちは幸せなのよね」
「私たちはさ、泉家のお墓に入る手続きはできてるんだし、適当に見つかりやすいとこでなら
死んでも、葬儀はともかく野晒しにはならないから」
「泉家、かあ…まだ実感ないのよね」
「いずみかがみさん」
「語呂悪いのよねー」
「だからね、もうさ、いっそ二人で心中しちゃおうか」
「あはは、いいわね、それ」
「でしょでしょ?昔流行ったじゃん、車で練炭とか」
「そうね、私たちも、そういうの考えなきゃいけないのよね。…まあ、でも、今すぐじゃなくて
いいわよね」
「ん。まだ少しはやり残し、あるよね」
「じゃあ、明日からは、死ぬまでにやっておく事を考えながら過ごそうか」
「そうだね、少し楽しみだね…死んだらさ、天国でみんなと、チアダンスしようか」
「あ、いいわねそれ!そうね、それは、凄く、うん。楽しみ!」





以上の文は2007年9月に書いたものです。
彼女たちの高校卒業後の話なので、今後、本編と齟齬が生じる可能性があります。
inserted by FC2 system